いつものように本棚の整理をしながら話している直輝に聞いてみた。

「好きな人とか居ないの?」
そう言うと直輝は一瞬迷った顔をして話し始めた。
その話によると付き合っては別れる繰り返しを続けているとのことだった。

そして最後に直輝は「何か足りない気がするんだよな〜。」と付け足した。
俺は納得して、本棚の整理に戻った。

「勉強見てやろうか?」
俺が放った冗談交じりの言葉を直輝は真面目に受け止め今日から教えてほしいと言い出した。
何もすることがなく断る理由がない俺は流されるままに本当に今日から勉強を教えるようになった。

正直勉強にはちょっと自信はあった。それなりの進学校を卒業してちゃんと大学もストレートで卒業できた。

中学ぐらいの問題なら簡単だろう。

…しかし、問題が一つあった。それは技術的な問題ではなく、精神的な問題…。

そんな心配をよそに直輝は嬉しそうに笑っていた。
俺は心の中でため息をつき仕事が終わったら出入り口の所で待ち合わせの約束をして仕事に戻った。

仕事を終えて出入り口に行くとそこには寒そうに待っている直輝がいた。
近くに行くと直輝が身震いをしたのがわかったので持っていた、手袋とマフラーをつけさせた。

最初は断るだろうと思っていると、直輝はそのとおり断った。
そんな直輝を無視してつけさせると直輝は恥ずかしさからかマフラーに顔をうずめた。

それから暫く歩いて俺の家に着くと、まず何か温かいものを作ろうと思った。
直輝は驚いていたが大学入学のころから自炊をしている俺にとって料理は日常のことだ。

しかし、俺の作ったスープに直輝が不服そうな顔をして睨んでいるものがあった。

…人参だ。まさかとは思ったが直輝は人参が嫌いのようだ。

子供のような好き嫌いに微笑みながらも、残してほしくなくて俺はスプーンに取り直輝の口に近付けた。
直輝はちょっと笑いながら口を開けると美味しそうにそれを頬張った。

その顔に俺もいつの間にか笑いが表情に出ていた。





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