俺は次の日もなんとなくあの図書館へと向かった。そしてまた適当に本を選び机に着く。
今度の本は日本の歴史に関する本だった。織田信長や徳川家康の時代のことが書かれている。
だが、俺はその本はめくるだけで目はその本へ向いていなかった。
無意識のうちに昨日のあの人を探している。受付にはその姿はなかった。
今日は休みなのだろうか。というかあの人はここで働いているのだろうか…。
昨日だけ臨時で手伝っていただけではないのだろうか。
その時ふと思った。自分がなぜこんなことを考えているのかと…。
俺は何でわざわざ図書館まで来てあの人を探しているのだろう。昨日あっただけのあの人を、、、
そんな事を考えていると後ろに人の気配を感じた。
振り返ってみるとそこには本棚を整理しているあの人の姿があった。
この図書館の制服?と言うのか全員が着ている緑色のエプロンの様なものを着ていた。
昨日は閉館時間だったからか着ていなかったから分からなかったがこれであの人がここで働いていることもわかった。
俺は本を返すふりをしてその人がいる本棚に近づいた。
その人の胸には職員の名前を表す名札が付けてあった。
『東司克裕(トウジカツヒロ)』その名札にはそう書いてあった。
(東司さんか…。)
俺は無意識のうちに心の中でその名前を呟いていた。
「君、昨日の、、、」
その時、急に声をかけられた。
「あっ!昨日はすみませんでした!」
「いや、気にしなくてもいいよ。それに今日は勉強?えらいね。」
東司さんは俺が持っている歴史の本をみていった。だから俺は咄嗟に「これでも一応、受験生だから。」と嘘をついた。本なんか全然読んでいないのに、、、
「そっか、じゃあ中3か。大変だね。俺も苦労したな。じゃあがんばってね俺は仕事があるから。」
「はい、ありがとうございます。すみません仕事の邪魔してしまって…。」
「いや、こっちこそ勉強の邪魔してごめんな。」
そう言って東司さんは事務室らしき所へと入って行った。
それからも俺は東司さんを目で探しながら本をめくっていった…。
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