この街唯一の図書館へ足を運んだ。規模はまぁそこそこだ。
俺は本棚から適当に本を取り出し机に着いた。ペラペラとページをめくっていく。

(つまらねぇ〜。ありきたりだな。)
適当にとったその本はどこにでもあるような恋愛小説だった。
ある女が困っていたところを1人の男に助けてもらい、ある日偶然再会し恋に落ちるというものだった。

(こんなに偶然再会なんかするかよ。)
俺は心の中で毒づきながら流し読みをしていく。「愛してる。」「君の事しか考えられない。」
甘ったるい言葉が次々と出てくる。

俺は心の中でため息をつき本を閉じた。
(付き合ってて一度もこんなこと言ったことねぇよ。こんなのリアルに言う奴いるのかよ。)

本を机の端に寄せて俺は机に突っ伏した。机の冷たい感触が皮膚に伝わる。

(俺って付き合うの短いよな。付き合うのってこんなに面白くないものなのか、、、)
俺はそんな事を考えながら目を閉じた。そしてゆっくりと眠りに落ちていった。



・・・



「…き………み…きみ…きみもう閉館時間だよ。」
そう言われて顔をあげるとそこには1人の男が立っていた。
辺りを見渡すと俺とその人以外にはもう誰にもいなくて窓から見える景色は真っ暗だった。

「すみません、、、いま出ます。」
立ち上がると机の端にあったあの本が目に付いた。俺が取ろうとするとその男の人が言った。

「あっ!俺が片付けとくからいいよ。それにしてもこれ最後まで読んだ?」

さすがにつまらなかったとは言えずに「いや。」とだけ応えた。
しかしその男の人はつづけてこう言った。

「そうかまだ途中か。この小説面白くないだろ?甘い言葉ばっかり並べて…。」
意外だった。こんな所に勤めている人は堅い人でこんなこと言うとは思わなかったからだ。

「そんなことないです。…じゃあ俺もう行きます。」

「あぁそうだね。じゃあまた今度。」

俺は不思議なギャップを持つ男の人に見送られながら図書館を後にした。

そして俺は気づかなかった。あの人は「また今度。」と言ったことに。




[戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -