僕が顔をうずめた先輩の胸は僕の胸よりも小さかったけれど、とても温かかった。
先輩は僕よりも少し背が低いので、僕が少し、しゃがむ体勢になるしかなかったけれど先輩はそんな僕をしっかりと抱きしめてくれた。
(あたたかい、、、)
このまま寝てしまうのでわないかと思うくらい居心地が良かった。溢れていた涙も先輩の制服に吸い込まれていった。
先輩が頭をそっと撫でてくれる。その手は割れ物を扱うかのように優しかった。
僕がもう一度先輩の顔を見上げた時チャイムがなった。
「そろそろ帰ろうか?」
先輩は少し残念そうな笑顔で僕を見ていた。
僕は先輩の胸から顔を離すと小さく頷いた。その時先輩の制服が自分の涙でじっとりと濡れていることに気付いた。
「ごめんなさい!制服汚してしまって…。」
「大丈夫だよ。石田君が俺の胸で泣いてくれるなんて光栄だよ。」
先輩はからかうように笑いながら言って、涙のしみができた部分を握っていた。
先輩はもう帰る準備をしていたけど僕は部活の練習着のまま来ていたので部室に向かうことにした。
行く途中部室が開いているか心配だったけれどサッカー部の部室の窓は壊れていていつも開いていることを思い出してそこから入れることに気付いた。
昇降口の所で先生に声をかけられたが先輩が、かばってくれた。
(先輩って本当に優しいな、、、)
僕は呑気にそんなことを考えていた。
部室に行くと暗い中に2つの人影が動いていることに気がついた。
「最終下校時間はもう過ぎているから誰もいないと思ったのにな。」
先輩は不思議そうに人影を見つめていた。
その時は、その人影の正体があの2人だということがまだ分からなかったので、不用心に近寄ってしまった…。
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