もう一度
地元のさびれた駅に小さな笹が飾ってあった。その下の机には長方形の紙が束で置いてある。
所謂短冊ってやつだ。
もうすでにその何枚かが笹に吊られて風を泳いでいる。
いけないと思いつつも、その内の一枚を手に取ってみる。
『世界平和』
そこにはそれだけ書いてあった。
…うん、実に壮大な夢だ。
いや、本当に立派だと思う。
そう思いながらも、俺は少しだけ笑った。
一枚紙をとりペンを立ててみる。
何て書こう。
俺にはあんな立派なことは書けない。
そうだささやかな願いを書こう。
本当にちっぽけだけど、俺には大切な願い…
あの日、夢を追いかけてこの街を出て行ったあの人が帰ってくる日があるのなら…
あの日、何も言えずに言ってしまったあの人がこの街に帰ってくる日があるのなら…
思い出話をもう一度
END
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