割り切っている。
竜は普通に女の子が好きな奴で、俺のことなんて見ていないってことは…。竜に彼女が出来たら…そのことを考えたことがないわけではない。
でも、俺は目の前の光景を見たくはなかった。
「遥、これ買おうぜ。これなら野球の時も邪魔にならないだろ。」
そう言って竜が手にしたものはカラフルなラバーブレスレットだった。
「そうだね。じゃあ、おそろいの買おうね。」
そう言って、小山さんは二つそれを手にした。
「純はどんなのがいいんだ?」
どんなのが良いって…本当はなんでもいいんだ。というか、別に興味があった訳じゃない。ただ、竜とお揃いの物が欲しいと思っただけ。
つながりが欲しいと思っただけ…。
「…俺もそんなのが良いと思ってたんだ…。」
これが俺に言える精一杯だった。
「じゃあ、こっちが良いんじゃないか?」
そう言って竜が手に取ったのは色違いの同じものだった。
竜が選んでくれた。そう思うことで、支払いを終えた小山さんの手の中にある紙袋を見ないようにした。
「じゃあ、俺払ってくるから。」
レジには女の店員さんが立っていた。
「彼女にプレゼントですか?」少し笑いながらその店員は言った。どうやら市川さんと俺が付き合っているように見えたらしい。
「…いや。」
俺は出来る限りの作り笑いをした。
「片想いの男の子に」なんて言えるはずもなく、それは本当にプレゼントでもない。
ただ、
自己満足のため。
本当に満足なんてしていないけれど。
「ごめん、待たせた。」
もうすでに店を出ていた三人に合流する。小山さんが袋を開けて中身を取り出していた。竜は早速それを腕につけて空にかざした。
「いいだろ、純。」
俺と竜がなんでもないっていう象徴。
見せびらかしてくる竜の腕に着いているそれを引きちぎってやりたかった。
デートなんて自惚れていた自分が哀しかった。
一人で勝手に思い込んで、
馬鹿みたいに楽しんで。
竜はデートなんて微かにも思っていないのに…俺も、どうやら相当の馬鹿だ。
手の中では買ったばかりの紙袋が皺を作っていた。