言えない言葉
それを聞いたのは小6の時の夏だった。
一緒のサッカーチームに所属していた俺は君の急な話にリフティングしていたボールを落とした。
「俺、2学期に転校するんだ。」
「はっ!?どこに?」
「具体的にはまだ聞いてないけど結構遠いみたいだなぁ。」
蝉の鳴く声が遠くなっていくのを感じた。
「約束したじゃん。中学でも一緒にサッカーしてレギュラー取ろうって…。嘘だったのかよ、、、」
「ごめんって。しょうがないだろ親の仕事の都合だし、、、」
俯いて唇を噛む。
…そんなことわかってる。子供なんて親の都合でどうとでもなるんだ。
こいつの所為じゃないくらいわかっている。
こんなの俺のわがままだってことも分かっている。
……わかっている―――。
それでも俺は許せなかった。
「そんなの知るか!お前なんか嫌いだ!」
そう言って俺は落としたボールをそのままにして君に背を向けて走り出した。
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