真っ白な封筒の中には一通の手紙と折り鶴が入っていた。
―――健太、今までありがとう。いつも見舞いに来てくれて嬉しかった。俺、怖かったんだ。最初はクラスの奴とか色々見舞いに来てくれたけど、その内みんな来なくなって。怖かった。俺、誰からも忘れられてるんじゃないかって。だけど、健太だけはずっと来てくれた。
俺、怖かったけど健太がいたから頑張れた。泣きそうだったけど、健太が我慢したから俺も我慢した。
全部健太のおかげだ。いままで本当にありがとう。一緒に海に行くのは無理だったけど、健太と一緒に居れてよかった。
俺が死んでも泣いたりするなよ。約束だからな。健太が泣いたら俺も泣いちゃうから。
絶対に泣くなよ。
じゃあ、いままで本当にありがとう
―――紀より
最後まで君は僕のことを考えてくれていた。
僕は紀くんとの約束を破った。僕は声をあげて泣いた。涙は頬を伝って床に落ちていく。
初めて紀くんとの約束を破った。
だけど、紀くんも約束を破ったんだ。一緒に海に行くって、遊ぼうって約束破ったんだ。
僕だけ約束守らなきゃいけないなんてずるいから僕は泣いた。
それに、僕の所為で紀くんは泣けなかったから。
僕が我慢したから紀くんは泣けなかったんだ。
僕が泣いてれば、我慢しなければ、紀くんは我慢しなくてよかったのに、、、
天国に行ってまで君を我慢させたくないから僕は泣くんだ。
―――それから数カ月が経った。
外された病室の名前のプレート。
無くなった君の席。
1つだけ空いた出席番号。
誰かほかの人のものが入ったロッカー。
潰れてしまった一緒に行った駄菓子屋。
無くなった君の家の表札。
おばさんたちは君が逝ってしまったあとすぐに引っ越してしまった。
君の存在が消えていく。
時間とともに薄れていく。
曖昧になっていく記憶。
だから、、、君を忘れたくないから僕は今も泣き続ける。君のことが大好きだから。
君が泣きながら笑っていたことを知っているから僕も泣きながら笑うんだ。
僕はきっと泣き続ける。
あの折り鶴の裏に書かれていた言葉
「健太。俺、健太のこと好きだったから。幸せになれよ。」
この約束を守り続けるために。君を想い続けるのが僕の幸せだから。
僕はずっと泣くんだ。
-END-
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