日に日に白くなっていく肌。
細くなっていく身体。
疲れたような瞳。
それでも君は笑っていた。
だから僕も笑った。君が我慢するなら僕も我慢しなきゃいけないと思ったから。
そのときはもう、知っていた。君の病気が難しいってことくらい…。
それでも僕は治ると信じていた。だって僕は約束したんだ。紀くんと…
ある日僕が紀くんの病室に行くと、君は眠っていた。
僕は起こさないようにそっと近づいてベッドの脇に置いてある椅子に腰を掛けた。
紀くんの腕には僕の腕にあるのと同じようなミサンガがつけられていた。
これは紀くんの誕生日に僕が作ったものだ。形は少し不格好だけど紀くんは喜んでくれた。
それが嬉しくて思わず聞いてしまった。多分一番聞いてはいけないこと。
「いつ退院できそう?」
紀くんは答えなかった。後になって僕も気がついた。これは聞いてはいけないことなんだって。
けど、気付いた時にはもう遅くて嫌な沈黙が僕たち2人の間に流れた。
「…ごめん…」
僕は何を言っていいのか分からなくて、口にしたことは謝罪の言葉だった。
「いいよ。別に健太が謝ることじゃないって。そうだ、今度家に帰れそうなんだ。一泊だけだけど。」
「えっ!そうなんだ!じゃあ僕の誕生日も近いから一緒に遊ぼう!」
「そうだね。一緒に遊ぼう。」
「約束だからね!」
「うん、約束。」
その約束の日は明後日に迫っていた。
眠ったままの君は規則的な呼吸を繰り返している。
その姿がとても綺麗で、僕は我慢できなかった。
僕は少し当たる程度に紀くんの唇に自分のそれを重ねた。
初めてのキス。
僕はこの時知る由もなかった。これが最後になってしまうなんて、、、
[戻る]