涙の理由
君はいつも笑っていた。
そして、泣いている僕にいつも「大丈夫?」と気遣ってくれていた。
色素の薄くなった君の肌は儚げで、とても美しかった。
…痛々しいほどに…
小さい頃からずっと一緒だった。
僕はお兄ちゃんのような君を紀(のり)くんって呼んで引っ付いていた。
そんな僕を紀くんは健太は小さい子みたいだなって笑いながら頭を撫でてくれた。
紀くんは僕の憧れで、目標で何より大切な存在だった。
紀くんが言ったことは絶対だった。
紀くんとの約束は何があっても守った。それは紀くんも同じで僕との約束はしっかり守ってくれた。
あの日も約束したんだ。僕の誕生日に一緒に海に行こうって。だから、ちゃんと準備しとけよって紀くんが言ったんだ。
でも、その日紀くんが来ることはなかった…。
沈んでいく太陽を眺めている時にその知らせは電話の大きな電子音と共に僕の下に届いた。
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