結局たどり着いたのは東司さんの家だった。
東司さんはまだ帰ってきていなくてドアによりかかって座り込んだ。

ドアの冷たさをやけに感じる。膝に顔をうずめる。

吹き抜ける風は冷たく、肌に刺さった。あの物語の結末が頭を過る。

「ごめん。」
その一言で男は女の下を去って行った。もし、俺がそんな事になったら。
たったその一言で東司さんが俺の前からいなくなってしまったら…。

「俺、どうすればいいんだろ…。」

所詮、俺は子供で東司さんを惹きとめる力なんて持っていなくて、、、
もし、東司さんが俺に飽きてしまったら…。そんな事を考えてしまう。

その時、階段を上ってくる足音が聞こえた。反射的に顔をあげて階段の方を見ると、訝しげに俺を見ているおばさんがいた。

それもそのはずで、子供がこんな所に蹲っているのを見ると誰でも気になるだろう。

一度立ち上がってみる。だけど、どこに行っていいのか分からなくて、また座る。

(俺、何も知らないんだ…。)

俺は図書館以外に東司さんの行きそうな心当たりがなかった。と言うか俺は東司さんのこと何も知らなかったんだ、、、
もう、図書館の閉館時間は過ぎていて風景は漆黒に染まっていた。

…寒い…

ふと、そう思って膝を抱き寄せて再び顔をうずめた。今度顔を上げた時に東司さんがいることを願って。
東司さんの大きな手が頭を撫でてくれて、目の前に東司さんの笑顔があることを願って、、、

そして、瞼を閉じてゆっくりと落ちていった。暗い寒い眠りに、、、

この時だけは、何も考えたくなかった。学校も試験の結果もあの本の結末も

東司さんのことも、、、

何も考えたくなかった。

何も考えたくなかったんだ、、、

時が止まったように静かに、何もなく終わってしまえばいいと思った。






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