俺は今日も図書館に来ている。いつもの席でいつものように本を捲る。

以前と違うのは本をちゃんと読んでいるということ。
あの日、東司さんと初めて会った日に読んでいた本。

最初は甘いだけの面白くないと思っていたもの。

「愛してる。」
その言葉を、東司さんの声で頭の中で妄想する。そんな変態染みたことをしてニヤニヤしてしまう。

「直輝、何してんだよ。」
後ろから急に声をかけられた。びくっとして後ろを向くと、そこには東司さんが立っていた。

あのエプロン姿で。つくづく見ていて似合ってると思う。
それを言ったら東司さんは苦笑いしていたけど、、、

「何してるって、本読んでるだけ。図書館は本読むところじゃん。」

「そんなこと言って、この前まで俺に会いに来てたくせに。」
そんな事を東司さんがこんなところで言うから、俺の顔はすぐに紅くなっていった。

「で、何の本読んでるんだ?」
東司さんが俺の手元を覗き込んでくる。

「これ。」
手元にある本を見せると、一瞬東司さんの顔がこわばった気がした。

「この本って面白くないだろ?お勧めの本があるからそっち読めよ。」

「やだ、先にこっち読み終わってから。」
無理やり東司さんを仕事に戻して本を読みなおす。東司さんは諦めたような、呆れたような顔をしていたが、渋々仕事に戻った。

再びページを捲っていく。1ページ1ページに愛を囁く描写がある気がするほど、この小説は甘かった。

こんな2人になれたらいいな。東司さんと俺、、、

2人で何となく時間を過ごして、他愛のない話をして、時には愛を囁く。
そんな2人になりたいと思った。

甘く、幸せな時間を2人で過ごしたいと思った。

俺はそんな事を考えながらページをゆっくりと捲っていく。

その後ろで、東司さんが呆れるような顔をして俺を見ているとも知らずに、、、





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