「東司さん、その、、、もう一回して…。」
顔を俯けていた俺には分からなかったけど、きっと東司さんはぽかんとした顔をしていたと思う。

だって、何の反応もなかったから。だから、俺は恥を忍んでもう一度言った。

「…もう一回、キスして…。」
我ながら恥ずかしいことを言っていると思った。だけど、もう一度東司さんを感じたかったから。
今度はしっかりと、愛のあるキスというものを感じたかったから。

顔をあげると今度も急に東司さんの顔が迫っていた。
唇に温かいものが触れる。東司さんのそれだということはすぐにわかった。

けど、さっきと違って東司さんの舌が俺の唇を割って入ってきた。
それは俺自身とも絡み合い唾液も絡み合う。

甘く、熱く、深く、妖艶なキス、、、

部屋の外の喧騒も、冷蔵庫の音も、時計の秒針の音も、全てが遠く違う世界のもののように感じた。
静まり返った世界の中に自分たちだけが存在している。そんな錯覚を感じた。

静寂の中で俺の心臓は張り裂けそうに高鳴っていた。

「…ふぅ…ん……ぅん」
口から声が漏れてくる。だって東司さんのキスが上手くて立ってるのもやっとの位だったから。
それに頭を後ろから東司さんの腕が支えていて顔を離すことができなかったから…。

いや、支えられていなくても離さなかったかもしれない。
ずっとこのままつながっていたいと考えたと思う。

それから暫くして東司さんの腕が頭から離れると共に東司さんの顔も離れていった。

「直輝。」
東司さんの唇が俺の名前をかたどる。それが嬉しくて、なんだかくすぐったくって。
俺は、また顔を俯けた。これ以上東司さんの顔を見ているとどうかなりそうで、、、

痛いくらいに分かった。どれほど自分が東司さんのことを好きなのかを。

俺は東司さんが好き。どうしようもなく、東司さんが好き。
声にならない声を心の中で呟きながら、もう一度だけ俺は泣いた…。





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