―――直輝side
試験を終えて東司さんの家に来た。いつも勉強しているテーブルには今日の試験の問題用紙が広げられている。
自己採点をする為だ。国語はそこそこで採点基準が変わるから出来ないらしいけど数学なんかは東司さんが採点してくれる。
東司さんは時々本を捲りながら赤ペンを走らせていく。
俺はというと東司さんが用意してくれていたスープを飲んで体を温めている。
椅子には前にもらったマフラーが掛けられている。すっかり僕の匂いに染まってしまったそれは毎日のように着けていたせいか、少しくたびれている。
そのマフラーのように俺の心もくたびれていた。試験の所為もあるが、本当の理由はそんな事ではなかった。
…期限が迫っていた。もう時間はなくなっていた。
試験が終わったということは、、、それは、、、俺が東司さんとつながっていられる理由がなくなるということ。
試験が終わってしまえば、東司さんが俺に勉強を教える必要はなくなる。
それは必然的に東司さんとの時間がなくなるということ…。
きっと高校に入ってしまえば忙しくなって図書館の閉館時間に間に合わなくなるだろう。
この家に来る理由がなくなってしまえば東司さんと俺とのつながりなんて簡単に、、、
そんなのはイヤだった。東司さんと一緒に居たかった・・・
採点に夢中になっているその人の横顔は綺麗に整っていて吸い込まれるようだった。
泣きそうになった。気を抜くと瞳から涙が溢れだしそうだった。
東司さんはそんな俺の様子に気づくことなく採点を続けている。きっとこのまま終わってしまうんだろうと思った。
東司さんは俺の気持ちに気付くはずもなく、試験の結果がわかってそれで、、、
本当にサヨナラ
あっけなく終わっていく。時間とともに流れていって、もう少しで終わってしまう。
だから俺は聞いてしまった。きっと自分が最初から聞いてみたかったこと…。
「ねぇ、東司さんは俺のこと好き?」
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