勉強も難なく教えてスムーズに言った。予想外と言えば予想以上に直輝の頭が悪かったことだ。
塾にも行っていないと言っていたからそれなりに自分でできるんだと思っていた。

しかし、基礎が不十分なせいで応用が全くできていなかった。

これからもこの家庭教師は続きそうだった…。

その時携帯が鳴った。一度テーブルを離れ携帯の画面を確認する。
同僚からのメールだった。内容は仕事の関係のどうでもいいこと。
一つ溜息をついて直輝の方に視線を移すと、直輝はしきりに外の様子が気になっているようだった。

それもそのはずで、外はもう真っ暗になっていた。
俺は直輝に声をかけ今日はここまでで終わらせることにした。
外に出る時にふと思い出したこと。直輝を玄関に残して自室へと向かった。

あった。
今日つけていったのとはまた別のマフラーと手袋。去年買ってからずっと使っていたものだ。
それを持って玄関にもどる。

持ってきたそれを直輝に渡すと以外にも素直につけた。

暫く外を歩いて見つけた自動販売機。俺はそれに駆け寄り小銭を入れた。

「コーヒーでいい?」
俺がそう聞くと直輝は顔を俯けた。
まただ。また遠慮してる。何かそう言うの距離置かれてるみたいで好きじゃないんだよな。

俺がそう思っていると直輝から意外な言葉が返ってきた。

「ココアがいい…。」
かわいい…。ふとそう思った。そして何だか嬉しくなって小銭を足してココアのボタンを押した。
ガタンと言う音とともに缶が落ちてくる。

「はい、ココア。」
そう言って渡すと直輝は俺の顔をじっと見つめて視線を放そうとしなかった。
俺から視線を外し歩き出すと直輝も続いて歩き始めた。下からの視線を感じる。

少し歩くと直輝が俺を呼び止めた。歩みを止めると少し先に歩いていたことに気がついた。

「寒かったら、手袋使って下さい…。」
そう言って直輝は自分がつけていた手袋を差し出してきた。

俺は手袋をつけ忘れてマフラーしかつけていなかったので手をポケットに突っ込んでいた。

しかし、それは断った。そのマフラーと手袋は元々直輝に遣るつもりだったから。
その代りに俺は直輝の手を包んだ。

しかし、直輝はその時とても悲しそうな顔をしていた。俺はどうしたらいいのかわからなくなったので冗談ぽく「何だったら手でもつなぐ?」と言った。

そして手を放そうとしたらそれを直輝の手が阻んだ。それはとても強い力でびっくりした。
暫くの沈黙のあと直輝は意を決したように言葉を発した。

「手、、、つなぎます。東司さんが嫌じゃないなら…。」





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