恋人になりたかった友達へ
別に期待していた訳じゃない。
「嫌いだ」
その言葉だけは聞きたくなくて、頑張っていた…。
その筈だったけれど、僕は貴方からのたった一言で何かを失った気がした。
「付き合うことにした」
確かに貴方はそう言った。周りの人は、はやしたて声をあげる。貴方の顔はみるみる紅くなっていく。
…そのすべてが嫌だった。
すべての風景が色褪せて見えた。
何もない…大好きな貴方が大好きな人といる世界。
貴方は楽しそうに笑っている。
僕になんか気にかけず…。
そんな貴方に僕が追い付けるはずもなかった。
手を伸ばしても届かない。
精一杯叫んでも聞こえない。
その日から僕は貴方の笑顔を見ても笑えなくなってしまった。だってその笑顔はもう僕に向けられたものではなかったから。
僕だけの貴方なんて最初からいないことはわかっていた。
それでも貴方の瞳に僕の姿を映していたかったんだ…。
失恋から始まった恋は失恋のまま終わっていった…。
恋人になりたかった友達へ
今でも大好きだよ。
-END-
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