最後の回2年の後輩は相手ピッチャーが投げた球を打ち上げた。
そのままボールは相手に返すようにピッチャーのグラブに吸い込まれていった…。
そこで審判のゲームセットの声が聞こえた。期待してなかったわけではないが、試合は自分が打てなかった時点で決まっていた気がした。

自分は打てなかった。今日で1番大事であっただろう打席で打つことができなかった。
そして、あの人が見ているときに打てなかった…。

引退でもない普通の試合なのに今までで1番悔しく、辛かった。

次第に視界がぼやけてくる。自然と肩が震える。我慢しても嗚咽が漏れる。

白く乾いた土に黒く斑点ができる。なんとか声は出さないように歯をくいしばるが嗚咽は漏れてしまう。

あの人にこんなみじめな姿を見てほしくなかった。
あの人の前ではかっこよくありたかった。いっその事帰ってほしかった。こんな姿を見せるくらいなら…。

竜也が帰る準備をしてこちらによって来た。
なんとか涙を止めよう、嗚咽を止めよう肩の震えを止めよう…。

それは無理なことだった。竜也は戸惑っていたがそんなことはどうでもよかった。
そのまま竜也に荷物を持たせてグラウンドを後にした。
1秒でも長く今の姿を見せておきたくなっかた。

その後1度も校庭の隅にある大きな木を振り返らずに監督の集合がかかっている輪の中に入った…。


[戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -