Hand to Hand



今日は特別な日。三年間過ごしたなじみあるこの学校を卒業する日。

そして大好きなあの人ともお別れ。

最後の合唱。最後のHR。最後の時間。

何もかもが最後だった。

HRが終わった後、在校生が作った花道を通って形式上は解散になった。

だけど、大多数の生徒は帰らずにあちこちで写真を撮ったり、友達と話をしたりしている。

僕が視線を走らせていく中、ちらりと映った体育館の陰には2人の男女が居た。

どうやら『愛の告白』ってやつだ。

こういうのは僕は嫌いだ。別れ際に想いを伝えるのなんてずるい。自分が傷つくのが嫌なだけなんだ。

でも、自分が実際にそうなってしまうとそんなのもいい気がしてきた。

最後ぐらい、正直な気持ちで想いを伝える。そんなものいい気がしたんだ。

再び視線を走らせ、君の姿を探す。

いた。君は友達と写真を撮りながら笑っていた。

僕は君の下に走った。

「ねぇ、写真撮ろう。」

そう言うと君は笑って頷いてくれた。

最初で最後の二人で撮った写真。きっと僕の宝物になる…。

あとは、、、

この想いが伝わればいいな。

「お〜い。」
その時、君の名を呼ぶ声が聞こえた。

「あっ、俺行くから。」
そう言って君は振り返った。

「待って!」
僕は思いっきり声を出して呼び止めた。

「何?」
君は僕の方に向き直ると、声が気になるようにちらちらと視線を向けた。

僕のことなんか、見てはいなかった。

「ううん。ごめん。じゃあまた今度ね。」
僕はそう言って手を差し出した。

「あぁ、また今度な。」

君もそう言って僕たちはギュッと握手を交わした。
初めて握った君の手は柔らかくて熱かった。

離したくない。そう思っても、君の手は力が抜かれ僕の手は温もりを失った…。

何でだろう。何で神様はこの手で気持ちを伝えられるようにしてくれなかったのかなぁ。

何で言葉でしか伝えられないようにしたのかな。

つないだ手はあんなにも温かかったのに、、、

三年間想い続けてきた。一目会った時から君のことが大好きになった。
三年間一緒のクラスでずっと一緒に歩いてきた。そのつもりだった。

だけど本当はそうじゃなかったんだ。

一緒に歩いて来たんじゃない。僕がずっと付いてきてただけ。君の後ろを必死に走っていただけ。

君は振り返りもせずに、どこか手の届かに所に行ってしまうから。

つないだ手のぬくもりが消えないうちに僕の瞳からは涙がこぼれ出た。

伝わったのは、、、つないだ手から伝わったのは君の体温だけだった。

-END-




[戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -