「晋也、じゃあ今日も谷崎さんのところに行ってくるから。」
『あぁ、分かった。俺も部活だし、終わったら迎えに行く。』
「うん、わかった。じゃあ終わったら連絡するから。」
そう言って将は手を振って行った。
将は今谷崎さんのところでカウンセリングっていうのを受けている。と言っても最近は俺たちのことばかり話しているみたいだけど、、、
将が言うには、谷崎さんは俺たちの関係を知っている唯一の人だから話をしたいらしい。
俺は毎回部活が終わってから迎えに行くのが日課になった。
―――
『将!帰るぞー。』
「わかった。今行く!じゃあ谷崎さんありがとうございました。」
谷崎さんにお礼を言って児童相談所を後にした。
『今日は何話したんだ?』
「まぁ、いろいろかな。晋也は剣道してる時すっごいカッコいいとか、、、」
『…ば、馬鹿じゃねえの!そんな話してるのか!?』
「うん、してるよ。Sだな〜とか。」
『S?』
「ほら、イニシャルが僕も晋也も全部Sじゃん。」
『そっか、そうだな。気付かなかった。』
そう、将は俺の親が養子として引き取った。将は今、「原野将」ではなくて「塩田将」となったのだ。
俺も「塩田晋也」だからすべてのイニシャルがS・S、S・Sになったのだ。
「晋也なにニヤけてんの?」
『…何でもない、、、』
「塩田将」か、、、なんかいいな。なんか結婚したみたいだ。
同じ道を歩いて、同じ場所に帰る。それが幸せでたまらなかった。
――……将、お前は今幸せか?……――
―――
もう家に着いてしまった。もう少しだけ晋也と話したかった気もするけどいいんだ。
僕と晋也はこれからも一緒なんだから。これからもずっと…。
晋也がドアを開けてくれた。温かい光が僕を包んだ。部屋の中からは美味しそうな匂いが漂っている。
「あら、2人ともおかえりなさい。」
優しい顔がのぞいた。
「…た、ただいま。」
言い慣れないこの言葉が嬉しくて、、、このことが幸せに感じて、、、今まで感じたこともない様々な種類の『愛』を感じて時々泣きそうになる。
ねぇ、晋也。僕は今すっごい幸せだよ。今までないくらい幸せだよ。
――……晋也、晋也は今幸せかな?……――
きっと二人の幸せは隣り合っている。
交わることもあれば、逸れてしまうこともある。でも、いつもそれは隣に寄り添っている。
そう、いつだって2人は一緒なんだ。
一緒にいれるだけで幸せなんだ。
-完-