「すみません、谷崎さんって方いらっしゃいますか?」
俺は一度先生と来た事のある児童相談所へと足を運んでいた。
何か自分に出来ることを探したくて…将を救うための力と手段が欲しくて…。
暫くするとこの前知り合ったばかりの女性が出てきた。
「あの、、、突然すみません…。ちょっと時間ください。」
慣れない敬語でちゃんとなっているのかわからないけど、これが今の自分にできる精一杯だった。
谷崎さんは少しだけ困ったような顔をして、考える素振りを見せた。
咄嗟に俺は食い下がった。
「お願いします!少しだけで良いから俺に、、、僕に時間を下さい!」
頭を下げる。少しだけ視界がぼやけていた。
「じゃあ、こっちの部屋にきて。」
顔を上げると真剣な眼差しが俺を貫いていた。
それはこの華奢な体の持ち主から向けられるとは思えないものだった。
通された部屋は白を基調としたどこか病院の様な雰囲気で少し圧迫感がある。
俺はパイプ椅子に腰をかけると、谷崎さんが話し始めるのを待たずに口を開いた。
「俺、将のことを護ってやりたいんです。だから…。」
『だから、君はどうしたいの?』
「俺は、、、将が笑えるようにしたいです。」
『じゃあ私たち大人に任せて、君は将君の傍に居てあげて。こう言ったらなんだけど、将君のお見舞いに来ているの君だけみたいだから、、、まぁ状況が状況だしね…。』
そう、この前まで将は面会謝絶だったのだ。それに加えてTVでどんなことが起きているのか知れ渡っているのだ。
こんな状況で何か将に声をかけられる人間なんてそうはいないだろう。
でも、、、
「それ以外にも俺に出来ることってありませんか…?何でもいいんです。何か出来ることってありますか…?」
『キツイ言い方かもしれないけど、大人にしかできないこともあるのよ。…でも、君にしかできないこともあるの。』
谷崎さんは宥めるような優しい声で言った。その顔は先ほどとは違って柔和な表情だった。
『私が将君の傍に居ても何もならないのよ。将君が本当に傍にいてほしいのは、親でもなくて、ましてや私でもない。君が傍に居てあげなくてどうするの?』
俺は何も言い返せなかった。その通りなのだろう。
俺に出来ることは将の傍にいてあげるだけ、、、谷崎さんや先生のように法的な手段を知っているわけではない。
『ねぇ、突然だけど君は将君とどんな関係なの?』