それから二日経った日のことだった。

最近よく開くようになった病室のドアが開かれ、塩田君と谷崎さんが入ってきた。

谷崎さんは「おはよう、将君。」とだけ言って、慣れた感じで椅子に腰かけ鞄の中からいろいろなプリントを取り出した。
晋也はと言うと、小さく「お早う。」と言ったきり、黙って谷崎さんの隣に立って取り出されるプリントの束に目を向けていた。

「将君、今日はいろいろな準備をしてきたの。」

そう言うと谷崎さんは一枚の紙を渡してきた。

「将君の今の状況を確認すると、その紙に書いてあることがあてはまるの。」

視線を落として渡された紙に書いてあることを呼んでみる。
そこには身体的虐待、心理的虐待、被虐待児症候群、などなど耳にしたことのあるものから、無いものまでたくさんの言葉が並べられていた。

「将君の意思があれば、親権の剥奪だって出来るの。どうする?」

どうすると言われても僕には拒否権なんてない。あの親子は僕さえいなければ幸せなんだ。

僕がいなければ温かい家族なんだ。

だから、僕はあそこにはもう帰ることなんて出来ない。

「お願いします。」

これで僕は施設に送られることになるのだろうか。そうなったらこの場所ともさよならだな。

いいや…。どうせ一度はさよならしたんだし…。

どこか違う場所に行って、次はだれかに求められるような存在になりたいな。

そう、、、誰かに必要とされるように頑張るんだ。

でも、、、

でも、、、本当は、誰かほかの人じゃなくて…晋也に必要とされたかったけどもういいや。

僕はもう晋也を信じてあげられそうにないから…。

晋也を見ると泣きそうになってしまうから…。

もう、晋也と一緒に笑えないかもしれないから…。

もう頑張るのは疲れてきたし。

「将君、本当は、その後の君の身元を受け取る後見人って言うのを家庭裁判所に選任してもらわないといけないの。だけど、、、」

谷崎さんは少しだけ言葉を濁すと話を続けた。

「こんな方法は、本当は望ましいとは言えないんだけど、、、親権を放棄してもらって養子にはいるっていう方法もあるの。とっても荒技なんだけどね…。」

そして、谷崎さんはちらりと晋也を見た。

僕はぎゅっと手に力を込めた。シーツに皴が寄る。さらさらとした感触が伝わる。

晋也の肩が少しだけ上がる。きれいな唇が言葉を形どる。大好きな声が空気を震わせ僕の耳に響く。

「俺が将を護る!」

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