それから谷崎さんは少し話して部屋を後にした。
僕は一つ溜息をついてベッドに身を委ねた。だけど、視線を戻せば君の姿があった。
「将、俺…。」
君の声はいつかの日みたいに泣きそうに震えていた。
「…ごめん…。」
君はそう一言言うと俯いて黙りこんでしまった。その肩は少し震えていて、大きい君の体が小さく見えた。
ねぇ晋也。そのごめんは何に対してのごめんなの?
僕を見捨てたことへのごめんなの?谷崎さんにすべてを無断で話したことへのごめんなの?それとも…。
それとも、、、
僕を嫌いになってしまったことへのごめんなの?
それなら、要らない。そんな謝罪なら要らない。
どんなに君が僕に謝っても、君が罪の意識を感じていても、それはただの別れの言葉…。
どんなに君が謝っても、君はもう僕と一緒に歩いてはくれないんだ。
あの楽しかった時間にはもう戻ることはできないんだ。それなら、もう会いたくなんてない。
本心は違うのかもしれない。いや、違うと確信できる。
本当はずっと晋也に会いたかった。ずっと晋也の温もりに触れたかったんだ。
晋也に護ってやるって言ってほしかったんだ。
だけど、どうせまた失うのなら、求めない方がいい。手に入らない方がいい。
楽しい記憶よりも、失った記憶の方が鮮明に残るから、、、
映像とともに悲しみもずっと消えずに残るから、、、
それなら最初からなければいい。
そうだけど…。
ねぇ晋也。僕ってそんなに嫌な奴だったかな…?僕ってそんなに一緒に居て楽しくなかったかな…?
僕、一生懸命頑張ったつもりだったけどな…。
晋也の前ではいつも笑っていたし、できるだけ迷惑もかけないようにしたつもりだったんだけどな…。
僕は晋也と居て楽しかったけどな…。
きっと晋也はそうじゃなかったんだね。
僕だけいいように思いこんでいただけだったんだね…。