俺は家に着くと、先生に電話をかけた。さっき病院で先生から電話番号が書かれた紙を渡された。
何度か呼び出し音が鳴った後に先生の声が聞こえてきた。
「もしもし。塩田です…。」
『塩田、原野とは何か話せたのか?』
「いや、何も話してません…。」
『そうか、、、話を本題に戻すけど、さっき話したことなんだけどな…。』
「わかってます。もう決心できました。俺、何でもします…。」
『そうか、すまないな。お前にこんなことさせて、、、』
「いいんです。俺がやらなくちゃいけないから…。」
『じゃあ明日の朝迎えに行くからな。』
「…はい…。」
少しして受話器からツーツーという電子音が聞こえてから、俺は受話器を置いた。
将を護るために決めたんだ。全部話すって。
なぁ、将。いまお前はどんな想いなんだ?
裏切った俺への嫌悪か、誰も護ってくれなかった悲しみなのか、それともどこまでも続くような果てしない孤独なのか、、、
俺は将が何を想っているのかは分からない。だけど、これからは分かろうとするから。頑張るから、もう一度だけ、俺に笑った顔見せてくれよ…。
わがままだと分かってるけど、俺、将がもう一度笑えるように頑張るから、もし将に嫌われたとしても頑張るから、笑ってくれよな。
俺のそばじゃなくてもいいから…。
お前が一緒に居たくないと思うなら一緒にいなくてもいい。俺を憎いと思うのなら、恨んでくれて構わない。それでお前が笑えるようになるのならそれでいい。
だれか、お前が一緒に居て幸せだと思う人の隣にいればいい。
俺はそれを遠くで見るだけで良い。それが俺への罰なのだろうから…。
遠くで大好きなお前が誰か知らない人にその笑顔を見せているのを見るだけで良いんだ。
お前の隣に俺はもういらない。