病院の前にはたくさんの人がいてちらほらカメラや見たことのある会社の名前が入った腕章をしている人がいた。
そんな中、俺なんかが面会が出来る訳がなかった。

「ただ今面会謝絶となっております。」

事務的な女の人の声が同じことを繰り返す。

それでも俺は待った。待合室に並べられた椅子に腰を掛け、頭を抱えた。

何で、俺あの時将に笑ってやれなかったんだろう。何で拒絶してしまったんだろう。
泣くくらいなら何で俺はあの時痛みから逃げてしまったんだろう。

「将、ごめん…。」

ふと背中に温かいものが触れた。顔を上げるとそこには担任の教師の姿があった。

「塩田、大丈夫か?」
その声はさっきとは違ってゆったりとした温かみがあった。

「先生、、、俺、、、何もしてやれなかった、、、」

「大丈夫、悪いのはお前じゃない。俺が悪いんだ。薄々原野がどんなことされているのか気が付いていたのに目をそらしてしまった。」

落ち着いている声の中にかすかに後悔のようなものが感じられた。

「違う。俺は、、、将を突き放したんだ。…裏切ったんだ…。信じてくれてたのに…。」

「塩田、自分ばかり責めるな。詳しいことを聞かせてくれるか?」

「……」

それから俺は将から聞いたことをすべて話した。話さないと重圧に潰されそうだったから。

話し終えると先生は決心したように前をまっすぐ見つめていた。

なぁ、将。俺何したらいい?俺何したらお前を救うことができる?

俺何したらまたお前の笑顔見ることができる?

俺何でもする…。もう痛いことでも、辛いことでも逃げないから、、、

ちゃんと護るから、、、何をしてでも、、、どんなことをしてでもお前を護りたいから、、、

俺に何かさせてくれよ…。

何もしないのは、、、もう辛いから、、、

俺のわがままだってことは分かってる。俺の所為で将はこんなことになっているんだ。

でも、お前の苦しそうな笑顔を見るのはもう耐えられない。

もう嫌なんだ…。
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