イヤだった。自分の無力さを感じるのが嫌だった。

好きな人をこの手で護ってやれない事実を押し付けられるのが耐えられなかった。

将はいつも笑っていた。

俺と話すときも、何をしていても笑ってた。

頬に青いアザを作ったまま笑っていた。俺が護ってやるって言った笑顔を崩すことなく笑っている。
俺は何もしてあげれていないのに、、、

結局俺は護ってやるなんて言っても何もしてやっていない。
将は未だに義父からの暴力に耐えているし、俺以外の人には嘘をつき続けている。

所詮、俺はまだ子供で、馬鹿で、できることなんて一緒にいることだけだった。

俺はこの時まだ分かっていなかった。傍にいるだけで将がどれ程救われていたのかを、、、

悲しい時も笑っている。俺と居る時もそんな気がする。将はいつでも泣きたいはずなのに、いつも笑っている。

俺があんなことを言ったせいなのかもしれない。

『笑えるようにしてやる』

こんなの違うと思った。こんなのただの俺の自己満足だ。

俺が将の笑顔を見ていたかったから、、、将の泣いている顔を見ていたくなかったから、、、

なぁ、将。俺が縛ってるのか?

俺がお前の顔に笑顔の仮面を張り付けているのか?

きっと俺が言うべき言葉は「笑えるようにしてやる」なんてことではなくて、「一緒に泣いてやる」だったんだろう。

でも、俺は弱いから、、、将の笑顔を見てしまうと縋ってしまうんだ。

笑顔の陰に隠された暗闇を偽りの光でかき消して見ないようにしていたんだ。

一度見た将の本当の笑顔を無理やり貼り付けていたんだ。

なぁ、今度会う時は何も言わずに泣いてくれ。何も言わずに俺の胸で泣いてくれ。

俺は自分からお前の笑顔を崩せるほど強くはないいから…。
だけど、お前が泣いたらしっかり抱けるくらいは強いから…。

だから、あんな顔で俺を見ないでくれよ。
心ゆくまで泣いたら、それ以上の笑顔をあげられるように頑張るから、、、

なぁ、次はいつ来る?

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