一人で晋也を待った昇降口。晋也の自転車が置いてある駐輪場。晋也の稽古を覗き見た剣道場。

学校には晋也との思い出がたくさんある。

…そう思っていた。

結局は晋也と過ごしたのも2年の終わりから3年の終わりの今までの短い期間だけで、思い出されることはついこの間のことばかりだった。
その約1年より以前のことはあまり覚えていない。多分、僕はその間死んでいたのも同然の状態だったんだと思う。

そしてきっと今もそんな状態なんだと思う。

どこに行こう。もっと晋也を感じていたい。もっと晋也に依存していたい。
例えそれが過去の思い出で、今は叶わないとしてももう少しだけ君との思い出の中に生きていたかった。

僕の道は真っ暗だった。前も後ろも足元も暗闇にまぎれて見ることのできない道。

君は僕の光。暗い道を照らしだして僕を導いてくれた。僕を温かい優しさで包んでくれた。

君という光がなくなってしまえば、光に慣れてしまった目は何も見えなくなってしまう。
今まで以上に暗闇が僕を飲み込んでしまうような錯覚に陥ってしまう。

君以外に僕が生きる意味を見つけることが出来なかった。

君の笑顔は僕の宝物。

君の存在は僕の希望。

君の声は僕の心。

そのはずだったのに、いつの間にか君は僕を追い越して、僕は君の背中を見続けていたんだ。
もう、一緒に歩いてはいなかったんだ。

もう、一緒に笑っていなかったんだ。

もういいんだ。

そう、僕が我慢したらみんな幸せになるんだ。

弥生子さんも義父も剛弥君も愛の溢れる家庭の中で幸せに暮らせるんだ。

晋也もみんなと楽しく笑って過ごせるんだ。剣道で西高に行って、多分活躍してみんなから頼りにされて、それでいて、、、

僕はそこには居ないんだ。居ちゃいけないんだ。

それはもう決まっていることで、、、

それでも、僕は君のことが好きでこの気持は変わらない。もう、思い出だけ焼き付けていくからさ、最後でもいいから、、、

笑って僕に話しかけてくれたらな…。

「愛してる」じゃなくていいから、、、

「じゃあな」でもいいから、、、

君の心の中に僕も残っていたかったな…。
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