「もういいや…。」
今来たばかりの道を辿ってまたどこか遠くへ行こう。もうここに来ることはないだろうからしっかり目に焼き付けよう。
しっかり心に刻もう、晋也との『思い出』を、、、
ここに来ても、、、学校に来ても晋也の笑顔が見ることが出来ないのなら、ここに来る意味はない。
もともと学校に行く理由はなかったんだ。ただあの義父から逃げたかっただけ。
晋也のあんな顔を見るのは、それよりも耐えがたいものだから。晋也にあんな顔をさせてしまうなら、、、僕なんかここにいらない。
血が出そうなほど唇を強く噛んだ。でも不思議と痛みは感じなかった。
そのかわり感じたのは今まで以上の深い悲しみと孤独…。
次はどこへ行こう。家に帰ることはできない。学校に居る事も出来ない。頼ることができる人もいない。
…晋也はもう僕を護ってはくれない…。
僕には何もない。
頼る人も、一緒に笑う人も、一緒に泣く人も、愛してくれる人も、、、僕の下には何も残ってはいない。
いや、違う。そのすべては晋也だったんだ。最初から僕のすべては晋也だったんだ。
だから晋也がいなければ何もないのが当然のことだった。
虚しいな。15年間生きてきた中で愛してくれた人が一人しかいないなんて。
それでもいいと思っていた。晋也が愛してくれるならそれでもいいと思っていた。
でも、もう少し愛を感じたかったな。もう少しいろんな人と幸せを分かち合いたかったな。
もう少したくさんの人の想いの中に生きていたかったな、、、
だけど、僕にはその資格はない。
僕は誰にも幸せを与えることはできないんだから、誰からか幸せを与えてもらうなんて出来ないんだ。
僕は幸せになっちゃいけないんだ。僕は人を不幸にしてしまう存在なのだから。
僕は要らないから。
神様は要らないものには幸せをくれることはなかったんだ。
唯一くれたものは少しの間の幻想とその後の果てしない悲しみ。
もうこれからは、晋也は僕を護ってはくれない。自分は自分で護っていかなくちゃいけないんだ。
これからはもうずっと一人なんだ…。
もう晋也の幸せと僕が関わることはないんだ。