気付いた時にはもう朝日が昇っていた。だけど、その光は鈍く霞んでいて輝いてはいなかった。
ただ、朝の冷たい風が吹き抜けて僕の体を冷やした。だけど、僕はそれを疎ましいとも不快なものとも感じなかった。
というよりも何も感じなかった。何も感じれなかった…。
時間は分からない。今、自分がどんな表情をしているのかわからない。とにかく会いたかった。昨日のことが嘘で、今日会ったら笑って迎えてくれそうだったから…。
…そう信じるしか出来なかったから…
…そう信じたかったから…
いつも通い慣れたはずの道を辿って学校へと向かう。幸い制服を着たままだから、このまま学校に行っても問題ない。
暫く行くと喧騒が聞こえてきた。もう学校は始まっている時間らしい。グラウンドでサッカーをしているのが見えた。幸せそうで楽しそうな声だった。
校門をくぐり靴箱へと向かう。見ると他の人の靴が無かった。
そういえば、今日の一時間目は体育だったな。ということは、さっきグラウンドでサッカーしていたのは僕のクラスだったんだ。
そのままグラウンドが見える木の陰へと場所を移して、視線をせわしく走っている人たちへと向ける。
楽しそうに笑って、はしゃいでいる。それは晋也も例外ではなかった。
君は体操服の上からチーム分けのための青色のビブスを着てボールを蹴っている。
ビブスの色は2色に過不足なく分かれていて、自分を抜けるとクラスの男子はちょうど偶数になることに気がついた。
その事実さえも自分の存在が否定されている結果のようで少しだけ悲しかった。
でも、その通りなんだろうな。
僕がいなくても君は幸せに笑えて、きっと僕の存在は頭の隅にもないんだろうな。
僕の頭の中にはいつも君がいて、他に幸せを見つけることなんて出来ないのに、君はすぐに幸せを見つけることが出来てそれを素直に受け入れることが出来るんだ。
君の幸せに僕は必要ないんだ…。
僕がいなくても君は幸せなんだ…。