目が覚めるとそこに晋也の姿はなく、僕の体には毛布が掛けられていた。
見渡して見ても人影はなく、電気も消えていて暗闇が広がっているだけだった。
『怖い』
僕の頭の中を支配している考えはその一つだった。晋也がいないこともだけど、暗闇の中に一人でいることが怖かった。
僕はわずかにドアの隙間から洩れる光に向かった。
ドアに手をかけたその時、向こう側にドアが引かれてそこに晋也の姿があった。
「…晋也。」
僕は手をのばして晋也の服の袖を掴んだ。もう離したくないと思ったから、、、
「将、もうそろそろ帰れよ。外真っ暗だし…。」
「えっ、、、でも、、、」
「いいから、帰れよ!俺にもやらなくちゃいけないことがあるんだよ!」
晋也の手は服をつかんでいた僕の腕を掴んでいた。
その手には力が込められていて、制服の袖のボタンが腕に食い込んで痛かった。
そして、君が僕を見る眼も痛かったんだ。
その眼には護ってやるって言ってくれた時の優しさも、心配して泣いた時の弱さも、一緒に笑った時の温かさも無かった…。
その眼には怒りが籠っていた…。
「帰れよ。もう、一緒に居たくないんだよ。」
何言ってるの晋也?
「早く帰れって言ってるんだよ!」
晋也、約束してくれたじゃん、、、
「お前と一緒に居たくないんだよ!」
護ってやるって言ってくれたじゃん、、、
「もう俺に付きまとうなよ!」
僕のキズも辛さも弱さも包んでくれるって、、、
「そういうのってウザいんだよ!」
好きだって言ってくれたじゃん、、、
「…原野なんて嫌いなんだよ!」
晋也、、、僕、何て言えばいい?
謝るから、急に家に来たりしないから、1人で寝たりしないから、もう迷惑かけないから、晋也の前で泣かないから、、、
ねぇ、晋也。笑ってよ。笑って冗談だって言ってよ。
「嘘だよ。本気にしたか?」ってからかってよ。
好きだなんて言ってくれなくてもいいからさ、、、
…嫌いだなんて言わないでよ、、、一緒に居させてよ…。
置いてかないでよ…。一人は…、、、いやだ…。
もう一人はイヤなんだよ・・・
…イヤだ…
それなのに晋也はそのまま僕の腕を引いて気付いた時には僕の目の前には晋也の姿はなくて、外の寒い暗闇の中に僕は立っていた。
どこに行けばいいの?ねぇ晋也。教えてよ。僕、帰る場所無いんだよ…。
晋也の場所しかないんだよ。
ねぇ、晋也…。
―――
これでよかったんだ。そう思っていた。
将には母親も戻ってきたし、どうにかなると逃げていたんだ。
自分が将のことを護れないという事実から眼を背けていたんだ、、、
自分の力のなさが許せなくて、将と向き合うことが怖くなったんだ…。
このとき、将が何故今日来たのか聞いてやればよかったんだ…。俺がちゃんと話を聞いてやれば、、、
この日、俺は人生最大の過ちを犯してしまったんだ…。