ごめんなさい。
生まれてから一度もその言葉を口にしない人はいないと思う。誰もが間違え反省したときに口にする言葉…。
だけど、今の僕には分からなかった。何が悪くて、どう反省すればいいのか。
分からない。全部分からない。分かろうとしない。ただ、僕は謝った。
晋也の手が僕に伸びてきた。殴られる。咄嗟にそう思って目を瞑る。
しかし、来るはずの衝撃は来なくて、代わりに僕の体は温もりに包まれた。
それが、晋也が抱いてくれていると気付くまでに時間は掛からなかった。
こんな温もりをくれるのは今までに晋也しかいなかったから、、、
僕は力一杯晋也にしがみついた。離れたくない。ただ唯一僕を求めてくれる存在を手放したくない。僕の存在意義が欲しい。
僕が存在して良い理由が欲しかった…。
僕は晋也の胸で抱かれたまま泣いた。溢れてくる気持ちは言葉にはならずに涙となって体外に排出された。
晋也は僕の身体を擦りながらずっとごめんと言った。謝らなくてはいけないのは僕の方なのに、、、
僕が泣き疲れて晋也の胸の中でウトウトとしだすと、晋也は赤子をあやす様に背中を一定のリズムで優しく叩いてくれた。
この時間が続けばいいのにと思った。理由も話さず無条件で優しさに包まれることができる場所があればいいのにと思った。
そう信じたかった。
「ごめんね。晋也。僕、西高に行けなくて…。」
一緒の高校に行くことが出来たらそんな淡い願いが叶う可能性があったけど、そんな事はまず無さそうだ。
この言葉は晋也への謝罪ではなく、自分への諦めだった。
「いいって。大丈夫だよ。西高に行けなくてもずっと会えなくなるわけじゃないだろ。」
そっか、晋也は大丈夫なんだ。この言葉は晋也の優しさだと分かっている。
だけど、もう少し求めてほしかったな。
僕は晋也がいないと生きていけない。それほど君の存在に縋っているのに、、、
君は僕がいなくても大丈夫なんだ・・・
朦朧としていく意識の中で僕はまた少し泣いた…。