衝撃はやがて痛みに変わり、こめかみの部分に強い痛みを感じた。
「公立に行かせるって言っただろ。」
義父は冷たく言い放つと再び椅子に座って食事を続けた。
僕は最後の望みを込めて母を見つめた。
母なら、、、実の母親ならどうにか話をつけてくれる。そんな淡い期待をしてしまった。
「母さ…「ごめんね。将。」
この瞬間、僕の淡い期待はいとも簡単に崩された。
「ごめんね。将。これから剛弥が私立の小学校に行かせるからお金がかかるのよ。」
「…っ!だから、お金のことは奨学金が、、、どうしても一緒に行きたい人がいるんだよ…。」
「知ってる?将。奨学金にはいくつか項目があってそれに当てはまらないといけないのよ。家は収入は他の家に比べて多いし、母子家庭な訳でもない。どれも当てはまらないのよ。」
「じゃあ、、、「将!とにかくあなたは私立になんか行かせられないのよ!あなたにそんなにお金をかけられないの。」
『…とにかく…』
なんだよそれ。僕は何なんだよ。僕も剛弥君もあんたの息子なんだろ。何が違うんだよ。なんであっちにはお金も愛情もかけるのに、僕には何もないんだよ・・・
…何でだよ…。
僕は感情を抑えることが出来なくなった。気づいた時には母の腕を強く掴んで「何で!」と叫んでいた。
「痛っ!離しなさい!」
母がそう叫ぶと同時に隣から腹に義父の蹴りが飛んできた。僕は立っていられずに倒れ込んだ。
顔を上げると怒りに満ちた義父の眼と、蔑むかの様な母の眼があった。
「やっぱりあなたはあの人の子供なのね。何かあったらすぐ暴力。嫌になるわ。そんなんじゃその一緒に行きたいっていう友達も離れて行くわよ。」
あの人というのはすぐにわかった。僕の本当の父親。薬に溺れた父親…。
それよりも、、、
「晋也は僕のことわかってくれてる。僕のことちゃんと見てくれてる。母さんとは違う…。」
僕は小さく呟いた。
「母さんなんて呼ばないで。あなたなんか私の息子じゃないわ!」
その言葉は一度温かさを知ってしまった僕には余りにも重く冷たかった。