家に帰ると母からさっき将が家に来た事を伝えられた。
何の相談もなく急に将の方から家に来ることはなかった。決まって俺が誘うか、何か用があった時に承諾をえてから来る位だ。
だからすぐに何かあったんだとわかった。
俺は荷物を玄関に置いたまま家を出た。もう外は黒に染まっていて月が昇っていた。
辺りを見渡してみるけどそれらしい人影は見当たらなかった。
とにかく周辺を探してみようと思い足を動かした。
意外なことに将はとても近くにいた。最初は公園の垣根で見えなかったけど、少し歩くとベンチに座っている姿が目に入った。
「将〜!おーい、将!」
俺が大きな声で叫ぶと、将は顔を上げ笑った。俺はその顔を見て驚愕した。
その幸せそうな笑顔とは似つかわしくない、大きなアザが頬に出来ていた。
将はその笑顔のまま俺の方に走ってきた。
「晋也帰ってくるの遅い。」
「しょうがないだろ。部活だったんだから。それに将、今日家に来るなんて言ってなかっただろ?」
俺は敢えて、頬のアザのことを口にはしなかった。
「で、どうしたんだよ?将がいきなり来るなんて珍しいよな?」
「う〜ん。大した用は無いんだけど、ただ晋也にあいたかったから…。」
「将がそんな事言ってくれるなんて嬉しいな。…でも、本当は何なんだ?」
分かっていた。将が何の用もなく来るはずはない。悲しいけどそれは事実だ。
「う、、、晋也には嘘はつけないか。ねぇ晋也、話聞いてくれる?」
単純に言って嬉しかった。将が頼ってくれることが嬉しかった。
将は極端に人に頼ることを嫌うから、こうして俺に頼ってくれることも少ない。
だから、俺は何も言わずに頷いた。俺が将を護ってやりたかったから。
「晋也、ごめんね。高校同じとこ行けそうにないや。…西高、行けそうにないや。」
そう言うと将は泣き出してしまった。
俺は将の手を引いて家に連れて行った。