「ただいま!」
元気よく入ってきた小さな男の子はその勢いのまま母の胸に飛び込んだ。

「剛弥(こうや)は本当にお母さんのことが好きなんだな。」

義父が今まで見たことのない優しそうな笑顔で剛弥と呼んだ少年を見ていた。

「こら、剛弥。将君に挨拶しないといけないでしょ。」

「えっと、、、原野剛弥です。よろしくお願いします!」

その少年はぺこりと頭を下げると、ぎゅっと母の袖を握った。

「そんな奴に挨拶なんてさせる必要ないだろ。」

義父がいつものような冷たい声で言って、その少年の手を取ると自室へと入っていった。
その時の義父の僕を見る目は黒く冷たく恐ろしかった。

「将、わかったでしょ?あの子は私と剛さんの子供よ。」

「………」

「久しぶりね、将。あの時は本当にごめんなさいね。私、ちょっとイライラしてて焦っちゃったの。将にとっては急かもしれないけどこれかまたよろしくね。」

母は微笑みながらそう言うと、今日の食事は私が準備するから。と言ってキッチンに入ってきた。

僕は手持無沙汰になってしまったので自室へと入った。

分からない。考えが追い付かない。話が急過ぎる。今日一日で色々ありすぎた。

義父の志望校の否定。母との再会、そして義父との再婚。そして、義父と母との間の実子。

あの子は大きく見ても4,5歳だ。母が義父と別れたのは6年前。
と言うことは、母は別れてからも義父にあっていて、そういう関係だったのだ。

それなら、この前義父の帰りが遅かったのも合点がつく。

そう、母は僕に隠れてずっと義父と会っていたのだ。

実の息子である僕には一切連絡をすることはなかったのに、、、

結局、母にとっては全て笑って済むようなことだったのだ。

「…イライラしていたから。」そんな理由で済むことだったのだ。

でも、これでチャンスが回ってきたのかもしれない。
義父はある意味で母の言いなりになっている。それでいて、何だかんだ言って母は僕の実の親なんだ。

それなら、、、
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