そんなこんなで結局三者面談の日がやってきた。最後の日の最後の順番に入れてもらった。
前の順番の人が終わるまで廊下の椅子に座って待つことになっている。
2つ並べられた椅子には案の定僕しか座っていない。
隣のクラスの廊下ではそわそわしている母親らしき人と生徒が座っていた。
母親は心配そうに中を教室の中を少し覗き込むように眺め、隣に座っている息子に何度も話しかけている。
僕はすぐに目を背けて自分の教室の様子を窺った。
しばらくすると前の順番のクラスメートが笑いながら出てきた。
「じゃあ先生ありがとうございました。」
彼の母親が担任に向かってお辞儀をして教室を後にすると、残ったのは僕と担任だけになった。
「原野、先に教室に入ってようか。」
担任は僕を教室に入れ、向い合せに並べられた机に座らせた。
「すみません、先生。まだ来てなくて…。」
「別に原野が謝ることじゃない。親御さんもお仕事で忙しいんだろう。」
先生は少し諦めたように言った。この前の騒動で義父のことが気に入らなかったらしい。
「先に進路の話、してようか。」
「はい。お願いします。」
「原野は、、、第一志望は私立の西高か。公立はA高校で良いんだな?」
「はい。それで西高についてなんですけど、奨学金制度を適応してほしいんですけど、、、」
「奨学金か、用紙はっと、、、」
先生が奨学金についてのプリントを探している時だった。
ドアが勢いよく開き一人の男性が入ってきた。その男性は見慣れたあの人だった。
「遅れてすみません。」
義父はそう言うと担任にお辞儀をして椅子に座った。
意外だった。義父が来るとは思わなかった。それは先生も同じだったようで、少しだけポカンと呆気にとられていた。
「あっ、えっと将君の進路についてですが、第一志望は西高でよろしいんですね?」
担任は我に返ったように本題に戻った。
しかし、担任は義父の一言で再び呆気にとられることとなる。
「いえ、将は公立高校に行かせます。」
その瞬間、時間が止まった気がした。