家へと着いてドアを開けようとしたが開かなかった。まだ父は帰ってきていないようだった。
持っていた合鍵でドアを開け、僕は急いでキッチンへと向かい、食事の準備をする。
丁度、御飯が炊けた時だった。ドアが閉まる音がして義父が帰ってきた。
当たり前のように部屋に向かった。そして、一言「食べてきたから、今日は食べない。」
そう言って、部屋に入っていった。今日は何だか機嫌がいいようだ。
普段だったら、自分が食べていようが帰ってきた時に食事の準備ができていなかったら、何をされるか分からない。
僕はほっと一息をつき、自分の分だけご飯をよそって、食事を済ませ自分の部屋へと戻った。
机には晋也の部屋にあるのと同じ写真が飾られている。二人で撮った笑顔の写真、、、
それ以外は何も変わっていない部屋。
それでも、何か大きく変わった気がしていた。彩りが増えた気がした。
部屋だけじゃない。学校での光景も登下校の景色も、全てが輝いて見えた。
今まで色が無かったかの様に思っていたのに、全てが瑞々しく見えた。
僕は今になっても携帯電話を持っていない。だから、こうして家にいる時は晋也と連絡を取り合うことはできない。
それでも、よかった。どこに居たって、例え一人で義父の暴力に耐えていたとしても、晋也のことを考えると一人じゃないと思えたから。
僕を求めてくれる存在があると思えたから、、、
晋也がいたから全てが変わった。晋也がいたから彩りができた。
晋也が居てくれたから僕は笑えた。晋也がいたから僕は生きていけた…。
晋也がいたから…。
これからも晋也と一緒に居続けられるように今やれることはただ一つ。
勉強!
今の学力だけで満足をしていたら足元をすくわれる。確実に合格するためにも今はしっかり勉強しなくてはいけない。
僕は机について教科書を広げ勉強を始めた。