…――う…ん…――。

目を開けるとそこには貴博君の姿があった。貴博君はあのまま寝てしまっていた俺に布団をかけてくれていた。

「あっ、貴博君ありがと。もう、反省終わった?」

『お前な、ちゃんと敬語使えよ。まあ他はみんな寝ちゃってるからいいか。』

敬語。そんなの嫌だ。俺と貴博君は単なる部活の先輩後輩の関係。そのことを思いしらさめるから。せめて貴博君と二人きりの時ぐらいあの日のように名前で無邪気に話していたい。

『まったく、監督も選手のこと考えろよな。もう十二時になるんだぜ。明日の朝も早いのにこれじゃ寝不足になっても仕方ないよな。』

貴博君は苦笑いしながら言っていた。月明かりに照らされたその顔はとてもきれいで、ふと悲しくなった。
もう貴博君は本当に俺の手の届かないところに行ってしまうんだ。

俺はいつかのニュースで言ってたことを急に思い出した。

「あっ、貴博君知ってる?今日なんとか流星群が見えるってニュースで言ってた。」

『なんとか流星群?流れ星のことか?知らなかった…。』

「ちょっとでいいから探してみよう。」

『そんなの興味ないし、別にいいよもう眠いし。』

「そんなこと言わずにさ。こんな機会もう来ないかもしれないじゃん。」

そう、もうこんな機会来ないかもしれないんだ。だから、、、だから、もうちょっとだけ貴博君となにかを共有していたいんだ。

『そうだな。どうせ、もう夜遅いんだしちょっとだけならいいか。』

貴博君がそう言ってくれたとき本当にうれしかったんだ。俺と貴博君は窓際に寄り添って空を仰いだ。夜空には満天の星がちりばめられていた。

貴博君はもうその星空に夢中になっている。

ねえ貴博君。知らないだろ。夜空に浮かんだ星を瞳に輝かせている貴方の姿を俺がじっと見つめていること…。
ずっとずっと見てきたことを…。

『あっ!』

貴博君がそう声をあげた。驚いて夜空を見上げる。

本当に一瞬だった。それは光の放物線を描いて儚く消えた。

『竜也見たか!?あれって流れ星だよな?すげ〜。俺はじめて見た。でもやっぱりあれだな、、、』

「あれって?」

『あんなに早く流れるんじゃ願い事を三回念じるなんて無理だよな。』

思わず吹き出しそうになった。さっきまで見ることも面倒臭がっていた貴博君がこんなにはしゃいでいるなんて。

『なに笑ってんだよ。』

貴博君はちょっと口をとがらせて、俺が笑いをこらえていることに抗議した。

「だって、貴博君がかわいいこと言うから。」

俺がそういうと貴博君は赤くなった顔を背けた。

そうだな。次は絶対に願い事三回念じてやる。なにがなんでもだ。

願い事はもう決まっている。もうずっと前から決まっていた。

それはきっと流れ星のように儚く消えていくものなのかもしれないけど、関係ない。

俺の願いは変わらない。

「いつまでも貴方と」

-完-
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