普段声を荒げたりしない俺を見て竜也は固まったように黙ってしまった。
俺は歯を食いしばって息を吐いた。それで何とか気持ちを落ち着ける。

「お前、先輩のことが好きなんだろ。心配しなくても別に俺はそんなこと気にしないから。」

「わからねぇ。」
ふと竜也が言葉をもらした。俺はその言葉の真意を掴むことができず、竜也に聞いた。

「何が分からないんだ?」

「何がって、お前が。っていうかお前が何考えているか、かな?
お前っていつもスカしてて食えない奴だけど、安心できる奴だから。そんなに怒るとこ初めて見た…。」

だって嫌だから。一人になるのが嫌だから…。アイツに嫌われたくないから…。

一人になる位なら、、、アイツに嫌われるくらいなら、俺は自分を抑えることを選ぶ。

「別にいいだろ。俺も時には怒りたいんだよ…。」
本当に久しぶりだ。人前でこんなにも感情をむき出しにしたのは。

「うん、別にいい。嬉しいな俺。なんか良太の本音聞けたみたいで。
さて、まぁそれはいいとして、さっきの話だけど、、、」
(はぁ、まただ。人を置いて自分を優先できる。…俺もこんな風にできたら良かったのかも知れないな、、、)

「裕也を試合に来させるなってことだろ?それは何で?」

「いや、裕也が来たら先輩調子狂うだろうなと思って。ほら、愛の力とか言うけど実際緊張するじゃん。そしたら、、、」

「それだけか?」
そう言うと竜也は急に目線をずらした。理由はそれだけではなさそうだ。

「お前ずるい。こんなおまえばっかり質問攻めしたらずるいだろ。」

「いいから、理由聞かないと俺も答えられないだろ。」

「わかったよ!嫌なんだよ、先輩のユニフォーム姿なんて見たら裕也もっと先輩のこと好きになるだろ。そしたら俺どうしようもないじゃんか、、、」

「それに、俺、先輩と約束したんだ。絶対に勝たせてやるって…。」

「そっか、でもその頼みは聞けない。俺も約束したからな。それに俺が何と言おうと裕也は見に行くと思うし。」
そう俺も約束したんだ。護ってやるって、笑えるようにしてやるって。そのためには先輩が付きものだということも分かっている。

「…そうだよな。ごめん急にこんなこと」

「いいさ。それにもし、先輩の調子が狂ってもそれをちゃんと整えるのが竜也の仕事だろ。先輩が勝つには裕也でも、ましてや俺でもない、竜也が必要なんだろ。」

「そうかもな…。そうだよな!俺、頑張ってみる!ありがと良太。」
そう言うと竜也は自分で呼びとめておいたにも関わらず走って行った。

やっぱり竜也を見てるとイライラする。いや、羨ましいのかもしれない。
あんなに自分に素直になって単純に好きな人のことを想うことができる。

俺なんかよりずっと強くて優しい…。ずるくて竜也だけ喋らせて俺は裕也が好きだということすら言ってない俺とは大違いだ。

「素直か、、、」
呟いた自分に絶対に似合わない言葉は口から出るとともに風の中に消えていった。







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