キーン!!

高い金属音と共に白球が高く空に上がりそのまま力なく自分の所へ落ちてきた。
俺はグラブを頭より高い位置にかざし、その瞬間を待った。

ボールがグラブの陰になって視界から消えるとともに「ボスッ」と手に震動が伝わった。
その瞬間グラウンドが揺れるのではないかと思うくらい歓声が上がり、チームがマウンドに集まった。

勝利の瞬間、このときは何物にも代えられない満足感と気持ちのいい疲労を感じる。
白いユニフォームの袖から伸びる黒く焼けた腕は高く空に向かって伸びていた…。

興奮冷めあらぬ中、お互いのチームは整列して並んでいる。
「「ありがとうございました!」」
互いの礼の声が重なってグラウンドにこだました。

顔をあげると同時に裕也がいる木の下に目を向けた。裕也は立ち上がってこちらを見つめていた。

俺は恥ずかしくて小さくしか手を挙げれなかったけど裕也は大きく返してくれた。

集合した後の監督の言葉も少なかったけど心なしか嬉しそうだった。
荷物を片づけて帰ろうとしている時も興奮は収まることはなくざわざわと騒ぎ合っていた。

「貴博!やったな。最後の締め取れるなんて羨ましいぜ。」
なんてチームメイトから言われながら頭をたたかれる。俺も笑いながら冗談を言った。

そして、荷物を持ってチームと別れ俺は走り出した。裕也がいるあの木の下に…。

試合後の心地よい疲労を感じたまま風を切る。視界に入ったその人は俺の方へ駆け寄ってきた。

「…裕也。」
走った所為で息が荒れて声が途切れ途切れになる。肩で息をしながら裕也の顔を見た。

「先輩、かっこよかったです…。」
そう言うと、良太がいる前にも関わらず、裕也はまだ汗臭いであろう俺の頬にキスをした。

俺は走って赤くなった顔がますます赤くなっていくのを感じた…。







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