結局その回は五番バッターも打ち取られ1点先取で終わった。
ベンチでグローブを持ち立ち上がろうとすると、戻ってきてマスクをつけた竜也に声をかけられた。

「先輩焦りすぎですよ。落ち着いて。裕也がいるからって力入れすぎ。」
そう言って竜也は俺の肩をポンと叩いた。その瞬間、俺の肩の力が抜けた気がした…。

「そっか、、、ありがと竜也。」
俺はそう言って竜也を見つめた。竜也は照れくさそうに目を逸らし、マスクで届かない鼻を掻こうとしていた。

そして2人はそれぞれのポジションへと走った。ホームベースを見ると竜也はもうずっしりと腰をおろして構えている。
(竜也は強いな、、、)
ふとそう思った。なんとなくだけど確かにそう思った。

それからすぐに回は周り第二打席目が来た。竜也に言われたことを心の中で復唱する。
ネクストバッターボックスから立ち上がりバッターボックスへと向かう。

足元の土を蹴りならす。相手ピッチャーは相変わらずしっかりとこちらを睨みつけている。

一度肩の力を抜き、バットを握り直す。深く息を吐いてギュッとユニフォームの胸の部分を握る。

(落ち着いて、、、無駄な力を抜いて、、、)
再び竜也の言葉を復唱する。心なしか呼吸が楽になった気がした。

バッターボックスに入りこちらも相手を見据える。帽子の陰から見える相手の視線は強く光っているように見えた。
ピッチャーが大きく振りかぶって振り下ろす。何度も見てきたその動作がとても新鮮に感じた。

自分のもとに投げられたそれはギリギリ、ストライクゾーンから逸れてキャッチャーミットに収まった。
ピッチャーに返球されると再び命を持つ生物のように俺のもとへと飛んでくる。
力のこもったそれが目の前に着た瞬間にバットを力いっぱい振りぬく。

手に強い振動を感じたのと同時に高い音がグラウンドに響き渡る。
やけに茶色に焼けた土に真っ白な白球が叩きつけられるのが見えた…。






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