ピッチャーが大きく腕を振り上げて勢いよく振りおろす。それと同時にボールが放たれた。
やや高めの球だった。俺は思いっきりバットを振った。

その瞬間バットの心地よい高い音が響き渡った。俺はバットを投げ捨て1塁へと走り出す。
ボールはバットに当たった後ピッチャーの右を抜けヒットとなった。

俺は難なく1塁を踏み泥のついたズボンをはたく。ランナーは満塁の1アウト。 絶好のチャンスだった。

4番バッターが打席に入る。こいつなら大丈夫だ。そう思った。

いまバッターボックスに入っているのは竜也だった。俺たちの学年に竜也ほどガタイのいいやつが居なかったこともあり、チーム1の強打者だった竜也が4番バッターを務めている。

竜也は落ち着いてバットを構えた。緊張で空気がこわばる。
再びピッチャーが大きく振りかぶって振り下ろした。ボールは先ほどとあまり変わらないスピードで竜也に迫っている。
竜也はバットを振りぬいた。グラウンドに再びバットの心地よい音が響きわたる。

しかし、ボールはポールの外側にそれた。審判の「ファール」と言う声が聞こえた。
竜也はいったんバッターボックスから出てバットを振り、納得したように立ち位置に戻った。

第二球目が竜也に向って投げられた。外角ギリギリのストレート。竜也は迷いなくバットを振った。
ボールはバットに弾かれ前へと飛ぶ。ファールラインすれすれのところを飛んでいる。

俺は勢いよく塁を走り出した。それと同時に前のランナーも走りだす。
ボールはフェンスこそ越えなかったが強い当たりで壁に当たった。

先頭打者が難なくホームベースを踏み俺も力の限り走った。それこそ周りが見えないほど無我夢中に…。
俺がホームベースにヘッドスライディングしたのと同時にボールも返球された。

審判は大きく手を挙げて拳を作り、それを振り下ろした。
「アウト!」
目の前で審判が叫ぶ。下唇を噛み俯く。
(くそっ!)
心の中で舌打ちをした。

裕也が見てくれているのに俺は何をやっているんだろ…。馬鹿だ俺…。







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