その回は三者凡退に抑えることができた。この活躍は素人の目から見るとピッチャーの力だけで抑えたように見えるが、キャッチャーのリードがあってこそだった。
そう思うくらい竜也のリードは絶妙だった。

攻守交代となりベンチへと戻る。木の下を見るとちょうど裕也もこちらを見ていた。と言うかずっと見ていたのかもしれない。

裕也は俺の視線に気づくと大きく手を振った。俺は何だか恥ずかしくて笑いながら視線をそらした。

そして俺たちの攻撃が始まった。まず先頭打者がバッターボックスに入った。
相手ピッチャーの第一球が投げられた。速さはまぁそこそこで左投げの投手だった。

ピッチャーの手から放たれたボールはバット独特の高い音を響かせて前へと弾かれた。
打者はバットを捨て1塁に向けて走り出す。審判の判定を待つまでもなくセーフだということがわかった。

そして、とうとう俺の打順が近付いてきた。俺はネクストバッターボックスに入り心を落ち着かせる。

ふと目線を上げるとそこには大きく手を挙げてそれをそのまま振り下ろす審判の姿があった。
それと同時に「アウト!」という声が響いた。

俺の前の打者はアウトに終わった。今までのカウントで1アウト1,2塁。
俺はアウトになって戻ってくるチームメイトに
「どんまい!まだ始まったばっかだから気にするな。」
とだけ言って自分もバッターボックスに近づく。

バッターボックスに入る前に少し素振りをして最後に気持ちに余裕を作る。
そして、最後に大きく力強く振って、心を引き締めてゆっくりとバッターボックスに入る。

第一球目は内角すれすれの球だった。審判は大きくボールの判定を出した。
そこまで速い訳ではない。しかし、左打ちの俺にとっては左投げの投手は苦手だ。

相手ピッチャーは俺なんかよりずっと背が高く圧迫感を感じる。
俺は一つ息をついてバットを握り直す。流れに呑まれないように、、、

俺はしっかりと相手ピッチャーを見据え、唇を強く噛んだ…。







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