とうとうこの日が来た。俺の中学野球最後の日になるかもしれない日。
俺は朝、いつもより早く起き軽めの朝食を摂ってユニフォームに袖を通す。
ユニフォームの布と布が擦れ合う音が心地よい。
それから間もなくして俺は家を出た。朝の柔らかな日差しと涼しい風が気持ちいい。
俺の足取りは軽くすぐに会場となる学校についた。
他の野球部員もちらほらと来ている。その中に竜也もいた。
「竜也、頼りにしてるからな。」
そう言うと竜也は当たり前といった表情で「期待してて下さい。」と言った。
全員が集まったところで監督の指示の後、レギュラーでウォーミングアップをする。
ボールがグラウンドを飛び回っている。所々でグローブの乾いた気持ちのいい音が響いている。
空も青く大きく広がっている。雲一つもない。大きな木の下を見るとそこには2人の姿があった。
裕也と裕也の友達、俺を、、、裕也を笑わせてくれた人。それからちょっとして監督から再び集合がかけられた。
「今日で最後と思うなよ。今日勝って次の試合にも出る気で試合をやれ!」
「「はい!」」
レギュラー全員の声が大きく重なる。
(そうだ、俺は勝つんだ。裕也の前で負けてなんかいられない!)
俺は心の中でそう呟いた。そしてチームのみんなと一緒に整列をする。
相手は俺たちのチームと変わらないぐらいのレベルで実力的には変わらないだろう。
だからこそ気をつけなければならない。力が変わらないということは何が起こるか分からないということ。
ちょっとしたことで流れがすぐに傾いてしまう。そうなってしまえば元に戻すのは難しい。
礼をした後自分のポジションへと向かう。同級生のピッチャーが土をならしている。
そして、そのピッチャーが投球フォームに入った。
腕が勢いよく振られる。その瞬間、キャッチャーミットの乾いた音が響いた。その時改めて試合が始まったことを実感する。
大きく息を吸い込むと新鮮な空気が肺を一杯にした。
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