それからの一週間はすぐに過ぎていった。先輩は野球の練習にいっそう力を入れて僕も試合に向けてサッカーの練習に打ち込んだ。

そしてとうとうその日はやってきた。
僕は当然のようにその試合を見にきた。隣には良太もいる。
いつかの校庭の隅にある木の陰に座ってグラウンドを見つめる。

対戦チームとの礼を終え、それぞれが散り散りとなってポジションにつく。先輩たちは後攻だ。
先輩のポジションは変わることなくセンターだった。竜也も変わることなくホームでずっしりと腰を据えている。

「ユニフォーム姿の先輩かっこいいな。」
隣で良太が小さく呟いた。それに僕は笑顔で頷いた。良太は苦笑いしながら僕の顔を見ていた。

ピッチャーが足元をならしながらボールを手で扱っている。そして第一球が竜也のもとに投げられた。

そのボールはキャッチャーミット独特の乾いた音を立てた。
一気に味方側のベンチが盛り上がる。

その回はピッチャーの活躍で三者凡退に抑えることができた。
ベンチに戻った先輩に手を振ると先輩は少しだけ笑って向き直った。

その時一緒に振り向いた竜也は僕を少し見た後、良太に視線を移した。すると、良太は少し手を挙げてひらひらと手を振った。

竜也はすぐに苦笑いをしながら足につけているレガースを外していた。僕が良太の方を向くと、「お前には関係ないから。」とだけ言って顔を伏せた。

グラウンドに向き直るとバッターボックスに先頭打者が立っていた。
相手ピッチャーからボールが投げられる。ボールは前へとはじかれた。

それからすぐに先輩の打席が近付いていた。だんだんと不安と喜びが入り混じった不思議な感覚に陥る。
先輩はもうネクストバッターボックスに入っている。

そして、とうとう先輩の打順が回ってきた。先輩は少しバットを振った後バッターボックスに入った。

もうここからは僕が何を叫んでも先輩には聞こえない。
例えここで僕が大声で愛を叫んでも先輩には届かないだろう。

僕はもうここで見ていることしかできない。じっとここで先輩の姿を…。






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