「なにいってるんだよ。竜也。」
先輩の口から出た言葉は意外にも疑問の言葉だった。そのことを少しも考えていなかった俺はすぐに顔をあげた。

「何って俺もう野球辞めるんです。これでもう貴博くんとも会うことないと思って…。」

「なんで野球辞めるんだよ…。」

「もう俺がここにいる資格ないですから、、、」

「お前がこの前のこと言ってるならもう大丈夫だから!野球辞めるなんて言うなよ…。」
俺はまた唇を噛みしめた。口に鉄の嫌な味が広がった。

(貴博くん…。わかってないかもしれないけど、『もう大丈夫』てことは俺の想いがダメだったってことなんだよ、、、)

「俺が小学校最後の試合の試合の時お前泣いてくれただろ。その時俺すごい嬉しかった。
こんなに俺のこと想ってくれてるやつがいるなんてわからなかったから。」

「それに言っただろ。俺はお前のこと頼りにしてるって。お前がホームにいるだけで俺、安心できるんだよ。
わがままかもしれないけど俺竜也とまだ野球したいんだよ、、、」

「だから野球辞めないでくれよ!」
先輩の大きな声が部室に響いた。

そうか、俺にもやることがあったんだあの日の約束が、、、

「じゃあ一つだけいいですか?」

「? 何?」

「もし、もしも裕也のことを好きじゃなくなったら俺と付き合ってくれますか?」
先輩は一瞬困った顔をしたが俺を見つめてこう言った。

「ごめん、今俺は裕也と別れるなんて考えられないから、その答えは出せない。」

「そっか、じゃあ俺の答えはこれです。」
俺はバッグに入れてあったあのボールを先輩に向かって投げた。

「何してるんですか『先輩』!キャッチボールしに行きましょうよ!」
そう言うと先輩は笑って大きくうなずいた。俺の好きな笑顔だ。

『考えられない』か。先輩らしい答えだな。まっすぐで、馬鹿正直で、頑固で、、、
そんな人を俺は好きになったんだ。
もしここで裕也の次は俺と付き合うなんて言ったらほんとに野球を辞めてやろうかと思った。

でも先輩は違った。俺の思った通りの答えだった。それに俺は思い出したんだ。
あの日の約束を。遠い日の約束を。
それは俺が勝手に決めた約束だけど絶対に守ると決めた約束…。

あの人を、、、貴博くんを勝たせてあげるという約束…。







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