今日も教室から外をボーっと眺める。もうそろそろ終業式で1学期も終わる。
意味のない日々を過ごす。夏休みは部活ばかりだろうな。

いや、もう部活もやめようか…。貴博くんと笑いあえない部活など行く意味がない。

目線を教室の中に戻すのと同時に授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。

「じゃあ、ここは宿題にするから今度の授業までにしておくように。」
数学教師から指示がされている中、俺は早々と教科書をバッグに入れてそのままバッグの中をまさぐる。

手にその感触があった。あの日からずっと肌身離さず持っている。
何年も慣れ親しんだ中でも特別なもの。貴博くんがあの日取った白球。追いかけて追いかけて取った白球…。

(俺はもう追いかけられそうにもないな…。俺がいても貴博くんを困らせるだけだ。)

帰りのHRを終えて帰りの準備をする。今日は部活に行こう。そして監督に退部届だそう。

そして、貴博君とも本当にさよならだ。

部室に行くとちょうど誰も居なかった。
俺は部室の真ん中にぶしつけに置いてあるベンチに腰をかけた。

部室を見ていると今までの先輩との時間が遡ってくる。

練習した後笑いあったこと。一緒に汗を流したこと。一緒に涙したこと…。
その時不意に外から大きな声が聞こえた。

「先輩おはようございます!」
その声の主はすぐわかった。俺は唇を強く噛んだ。

そしてすぐに部室に貴博くんが入ってきた。貴博くんは俺の顔を見ると困った表情になった。

(もう、これで最後だ。)
そう思って俺が口を開こうとした時、先に貴博くんが口を開いた。

「何やってるんだよ竜也。こんなところで。」

(嫌われてるな、俺。一緒に居たくないのも仕方ないか…。)

「さよなら言いに来たんです。もう野球部も辞めます。いままでありがとうございました。」
俺は深々と頭を下げた。涙で曇った今の顔を見せないように。







[戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -