裕也が泣きやんで落ち着いても俺は裕也をしっかりと抱きしめた。この存在を離したくなかった。せめてこの時だけは、、、
しかし、裕也は顔を離し俺を見上げてこう言った。
「ありがとう、良太。話したらすっきりした。ごめんこんなこと困ったね。」
「いいさ、裕也の気がこれですめば。それにいつも言ってるだろ困った時は頼ってくれって。」
いいんだ、それで。これで裕也を俺の腕の中に抱けるのなら…。たとえこんな繋がりでもお前の傍に居れるなら。
「ほんと良太優しいね。ありがと。」
裕也は流れ出た涙をぬぐいながら言った。『優しい』か、、、
「…俺って矛盾してるよな。」
俺はあの先輩が竜也と抱き合っていたのを裕也が見た時に『お前が笑えるようにしてやる。』そう言ったのに。
今俺がやっていることは『泣いている』裕也と一緒にいることだ。裕也の泣き場所になって繋がりを作ることだ。
こんな自分が惨めだった。好きな人と繋がるために好きな人の大切な繋がりが切れるのを願う。
優しさとはかけ離れた自分の気持ちが許せない。だけど、俺が裕也の傍にいるためには、、、
それから2人で少し歩いた。ここから見える裕也の横顔は吹っ切れたように晴々としていた。そして別れ道さしかかった。
裕也は「じゃあまた明日。」と輝くような笑顔で俺に手を振った。
この笑顔をいつか見れなくなる日がくるのだろうか。もしその日が来てしまったら俺はどうすればよいのだろうか。
「じゃあまた明日。」さっきの裕也の言葉が頭に響いた。
そうだ、そんな先のことばかり考えていてもしょうがない。いつ来るか分からない『その日』まで裕也とずっと一緒に居れたらそれでいい。
明日も裕也に会える。それだけでいい。その代りその日々を大切にすればいい。
裕也との時間を、、、裕也が笑ってくれるこの時間を、、、
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