それから少しして僕は落ち着いて涙も止まった。その間も良太はしっかりと抱きしめてくれた。
優しく大きな胸に包まれている安堵感があった。
僕は顔を離して良太の顔を見上げた。その顔は子供をあやすような優しい表情だった。
「ありがとう、良太。話したらすっきりした。ごめんこんなこと困ったね。」
「いいさ、裕也の気がこれですめば。それにいつも言ってるだろ困った時は頼ってくれって。」
「ほんと良太は優しいね。ありがと。」
「…俺って矛盾してるよな。」
「えっ!?何て?聞こえなかった。」
「いいや、関係のないこと。 じゃあそろそろ帰るか。明日の部活は気合入れていけよ!」
「うん!」
そのあと少し歩いてすぐに良太と別れた。そして家へと続く道を1人で歩く。
あの日先輩が言った言葉「好きだよ。今までも、この先も君を、裕也を想い続けるよ。」
その言葉が頭の中に響いた。この言葉を信じて、そして自分に素直になって…。
こんな簡単なことなのに良太に言われるまで気づかないなんて、、、
家につくと僕は泣き疲れていたのでご飯を少しだけ食べて風呂に入ってすぐに眠りについた。
僕は夢を見た。先輩がバッターボックスに立っている光景。先輩はこちらを見ると微笑んだ。そしてピッチャーからボールが放たれた。
1球目はストライク。そして2球目は外角ギリギリのストライク。そして最後になるであろう3球目が放たれた。
しかし、そこで夢は覚めてしまった。優しい日の光が部屋に差し込んでいた。
僕はすぐに着替えて朝練へと向かった。学校につくと真っ先に良太に「ありがとう」と言った。
良太は何事も無かったような顔をしていたが、それでよかった。変に追及されても面倒くさいし…。
部室を出るとそこには自主練に来ていた先輩と鉢合わせになった。
「先輩おはようございます!」
僕は大きな声であいさつをした後周りから見えないようにそっと先輩の頬にキスをした。
先輩は驚いて顔が真っ赤になっていたが、「おはよう!また放課後に。」と笑顔で返してくれた。
その日の朝連は言うまでもなくずば抜けて動きがよかった。
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