良太は1つ息をつくと僕のことをしっかりと見据えた。そして言葉を続けた。

「裕也は考えすぎてる。周りのことを考えすぎているんだよ。」
いつかこの公園であの先輩に言った言葉をいま裕也に伝える。
それは自分自身にも言えることであるのに…。

「裕也はあの先輩のことだけ考えてればいいんだよ。竜也のことなんか考えなくていい。」

「でも、竜也の気持ちは本気だった。真剣に先輩のことが好きだった。その気持ちを僕の所為で、、、」
僕は良太の眼の前にも関わらず涙を流し始めてしまった。
いや、良太だったから涙を流せたのかもしれない。そういえばこの前もこんなことがあった。

先輩と竜也が抱き合っていた日だ。その時も良太の前で涙を流した。
その時良太はしっかりと抱きしめて僕を支えてくれた。
僕は良太に何もしてあげれていないのに…。

その時、前から消えかけていたこの公園唯一の明かりが消えて辺りは月明かりのみに照らされた暗い静寂に包まれた。
すると良太は僕に歩み寄りあの日のように抱きしめた。しっかりと力強く、僕の泣き顔を隠すように、、、

「裕也、泣きたいだけ泣け。しっかり泣いてあの先輩に思いっきり笑顔を見せてやれ…。」
そう言って良太は片腕でしっかりと頭を抱いて、もう片方の腕で僕の体を自分の体にしっかりと引き付けた。
それがきっかけのように僕は嗚咽を漏らしながら涙を止めどなく流した。
その嗚咽は良太の体が阻んで外には漏れず、涙は良太が着ている制服へと吸い込まれていった。

「僕…竜也の気持ち聞いて…それでも先輩が好きで……でもいつか先輩が離れていくんじゃないかって…怖くて…でも先輩の前じゃ泣いたらいけない気がして…。」

「そうか。裕也お前は強くなくていいから、俺が代わりに強くなるから、そして俺がお前を護ってやるからな。あの先輩の前で泣けないなら俺がお前の泣く場所になってやる。だから…」
良太はそこで言葉を一度詰まらせた。しかし、すぐに言葉を続けた。

「お前が泣きたくなったらいつでも頼っていいから、俺はお前の弱いとこまで包んでやるからな。俺はずっとお前の傍にいるから、、、」
そう言って良太はさらに力を込めて僕を包んでくれた。そして力強くこう言った。

「お前は先輩に笑ってやってくれよ、、、」

吹き抜ける風はもう、少し肌寒く夏の終わりを知らせていた。






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