それから僕と竜也は少し気まずくなったけれど今まで通り接することができた。
良太はと言うとあの話の内容は聞いてこない。気を使ってくれているのだろう…。

先輩と竜也の仲は変わらずだった。先輩も同性愛者と言うこともあり竜也を軽蔑する訳でもなく竜也が先輩のことを嫌いになった訳でもない。
しかし、それでも前のようには接することはできていないような気がする。

野球部のなかでも仲のよかった2人が最近2人きりになることを避けている。
それは傍から見ても明らかで理由を知らない人からすれば喧嘩でもしたのかと思うぐらいだった。

それは仕方のないことかもしれなかったけれど割り切れないものだったのだろう。

「裕也、帰ろうか。」
部活が終わって待っていた僕に先輩がかけてきた。

あの日以来先輩と僕はずっと一緒に帰っている。僕自身本当に幸せだった。
先輩が笑顔で僕に話しかけてくれる。2人で他愛のない話をしたり時にキスをしたり、、、

でもそこには僅かな罪悪感があった。
『起こってしまったら、起こる前には戻れない』
いつか聞いた良太の言葉が頭に響いた。改めてその言葉の意味がわかった気がした。
その時、人が幸せになる時は同時に不幸になる時だということを実感した。

それでも、僕は先輩が好きだ。たまらなく好きだ。この気持ちに嘘をつくことはできない。
たとえそれで竜也が傷ついていようとも、、、

「先輩、、、今度試合ですよね?」

「…うん、今度が最後の試合。まあ勝ち進めば県大会とかでられるけど…。」

「見に行きますね。頑張ってください。」

「ありがと、俺も裕也の試合見に行くからな。出るんだろ?」

「まぁ一応…。でも無理しなくていいですよ。どうせ活躍なんてできないし…。」

「活躍なんてしなくていいって!俺は裕也がサッカーしてる姿を見たいだけだから。」
先輩は笑いながら言った。僕の大好きな笑顔で…。

この頃ふと思うようになった。この笑顔はいつまで僕のことを照らしてくれるのだろうか。と。
いつかこの笑顔を他の人に向けているのを見なければならないのか。と。

その時僕はどうすればいいのだろうか…。
先輩は僕よりも先に向かって進んでいく。その時僕は追いつくことができるのだろうか…。

「じゃあまた今度な。」
先輩から声を掛けられて顔をあげるともうそこは分かれ道だった。いつの間にかもうここまで歩いてきたのか…。

「じゃあまた今度…。」
そう言って僕は先輩に背を向けた…。






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