「先輩!俺ずっと先輩のことが好きでした。気持ち悪いと思うけどこの気持は抑えられないから、、、本気で俺は先輩のことが、、、貴博くんのことが好きだから…。」
そう伝えると先輩は困惑した顔をして俯いた。
俺は何も言わずに貴博くんを腕で包み込んだ。
(あぁ、これで俺も終わったな。野球部にいられなくなるかもしれないな。と言うか完璧に先輩から軽蔑されるな…。)
そんなことを考えていると後ろで物音がした。振り返るとそこには裕也が立っていた。
何で裕也がいるのかわからなかった。もうサッカー部は終わって帰ったはずなのに。
そして裕也は何か悟ったのか走って行ってしまった。先輩は困惑したようで挙動不審になっていた。
先輩は裕也のことを知っている?何故?
「竜也ごめん!」
貴博くんはそう言うと走って行ってしまった。暗闇の中に1人残される。
先輩の駆けていく足音がやけに大きく響いていた。
「そっか、先輩は裕也のことが、、、」
空を仰ぐとそこには雲に隠れた月があった…。
「先輩、、、裕也お前もか、、、」
雲に隠れた月の光がさらに霞んだ。頬に温かいものが流れる。
瞳から流れ出たそれを制服の袖で拭って学校を後にする。歩いているとそれは自分の意思とは反して瞳から流れ出てくる。
必死で堪えてもそれは拭っても拭っても頬を濡らした。
『俺のためにそんなに泣いてくれるなんてお前かわいいなぁ。背は俺より高いけど弟みたいだな』
いつか聞いたあの人の言葉が頭に蘇る。『俺のために泣いてくれるなんて…』貴博くんはそう言った。
俺はどうでもいい。貴博くんのためならいくらでも泣ける。貴博くんがそれで振り向いてくれるなら…。
そして俺は泣きながらメールを送った。 先輩にではない裕也にだ。
「先輩、さよなら、、、」
再び空を仰ぐとそこには先ほどは隠れていた月が奇麗に輝いていた。
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